情報理工学の電子情報学専攻を受けました
2018年夏院試に合格したので体験記を残します。
1.はじめに
この専攻を受験しようと思ったのは5月末の入試説明会です。
興味のある研究室が多かったという理由で最終的には電子情報を受けることにしました。アルゴリズムよりは機械学習、競プロよりKaggleが好きだったので雰囲気的に馴染みやすそうというのもありましたが。
さて、志望決定後、多くの場合は院試勉強を卒論の研究と並行しながら進めることになります。
電子情報の試験範囲は割と手広く、分野ごとに参考書買ってきて対策するとかなり時間を食います。
来年度、専攻外から受けようと思っている人は余裕を持って、遅くとも3ヶ月前、できれば春休みから勉強を始めるといいです。とくに配属先が忙しい研究室だったりすると思うように勉強できません。
ちなみに自分は研究室訪問もしておらず、過去問の解答も入手してませんでした。受験者としては底辺のスタートラインにいたと思います。
こんな立場で言うもなんですが、やはり研究室訪問はしておくべきでしょう。志望先の先生と面識を持っておいたり、研究室の先輩から過去問の解答や口述試験の情報をもらうチャンスです。こういった情報というのは、試験を受ける上で精神的に大きなアドバンテージにもなります。
2.対策
電子情報の入試ではTOEFL、数学、専門の3科目の筆記テストを受けることになります。所感ではTOEFLはそんなに差がつかないので、数学、専門に力を入れた方が良いです。
TOEFL
ITP、IBTの2種類から選ぶ形式ですが、だいたいの人はITPを選ぶと思います。お金持ちならIBTを何度か受けてみて、一番よかったスコアを提出するというのもアリ。
TOEFLは差がつかないと言いますが、ある程度勉強した上でのことです、特にリスニング、文法は参考書を買ってそれぞれしっかりと対策するべきでしょう。以下の参考書が使えました。
・この本にもあるように、文法は9割が目標。問題のレベルは決して高くはない。
全問正解するTOEFL ITP TEST文法問題対策 ([テキスト])
- 作者: 林功
- 出版社/メーカー: 語研
- 発売日: 2012/05/29
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・リスニングパートはおそらく一番の難所。スピードが速く、問題と問題の間も短いのでたくさん聴いて慣れる必要がある。
- 作者: 宮野智靖,ジョセフ・T・ルリアス,木村ゆみ
- 出版社/メーカー: 語研
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数学
線形代数、解析、確率統計の大問3つ。
過去問をみるに、線形代数は固有値、固有ベクトル、対角化だけでいける易しい分野というイメージがあったが、最近はそうでもないようです。去年(H30)は、正規方程式、ラグランジュ乗数法というマニアックな題材が出ました。
・この本は良書でした。ポイントが満載で、証明問題のコツとかも載っている。
- 作者: 寺田文行
- 出版社/メーカー: サイエンス社
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・院試数学の過去問集。若干東大工学部の問題が多い気がするが、演習するならこの本がいいと思う。この本でカバーしてる範囲は線形代数、微分・積分、微分方程式。
解析
解析は範囲が広いので3つの中では一番対策しづらい。特に今年(H31)は9年ぶりに複素積分が出たりして多くの受験者の予想を裏切った(はず)。微分積分、微分方程式、複素積分、ベクトル解析などのテーマを広く学習しましょう。
・上と同じ本(院試数学の過去問って他にあるんですかね)。複素積分はⅡの方に載ってます。
確率統計
最後に確率統計。これは一般的な院試の内容&難易度という感じなので、市販の参考書を用いて対策するのが有効でしょう。確率漸化式もよく出るイメージがあります。
専門
電気電子回路、計算機アーキテクチャ、論理回路、 アルゴリズムとデータ構造、情報通信、コンピュータネットワーク、 信号処理、情報理論の分野から5題出題し、その中から3問選択
と募集要項にあります。
過去問を見ながら、自身の学部時代の知識がなるべく活かされそうな分野を選ぶといいと思います(本当は、全て勉強して本番の選択肢を増やすのがベスト)。
その際、過去問をみてどの年も必ず解ける大問が3つはあるとなるように分野を選択しましょう(すると、最低でも4つは勉強することになるはずです)。
自分は最初、電気回路とアルゴリズムと信号処理を選択してその3題だけ解くつもりだったのですが、過去問をみるとアルゴリズムもしくは信号処理が出なかった年があったので、情報理論も加えました。
結果的に、電気回路、アルゴ、信号処理、情報理論の4つをカバーしておけば、大問3つ解けない年は無かったはずなので、それでいきました(あくまで自分の認識なので、鵜呑みにせず、必ず自身で過去問を確認して下さい)。
時間に余裕があれば勿論、全分野やった方が良いです、本番で問題を選べるのは大きい。
ちなみに自分はアーキ、情報通信、ネットワークは全捨てでした。
いちおう専門の対策も書きますが、4分野しか書けないのでご容赦ください。
電気電子回路
過去問を見るとわかると思うが、出る問題のパターンは決まっている。
非理想的な特性をもつオペアンプ、スイッチング回路の過渡応答が出る印象が強い。
↓自身が使っていた本。オペアンプの対策用です。
・過渡応答の問題は工学部の授業でやっていたので、ネットで検索した答えつきの過去問の類題を数問解いたぐらいで終了。初学者の方は参考書を買ってやりましょう。
他の方の受験記でおすすめされていて自身も使っていたこちらの本をおすすめ。良い本だと思いました(ただし、擬似コードがpascalで書かれてる点を除けば)。
特にグラフ木のアルゴリズムは過去問でも頻出なのでやっておくべし。
試験内容がこの本から逸脱することはないはずです、だいぶ分厚い本なので。
アルゴリズムとデータ構造 (岩波講座 ソフトウェア科学 3)
- 作者: 石畑清
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信号処理
基本的な問題が多い。フーリエ変換、z変換の定義などはちゃんと覚えておきましょう。特におすすめはありませんが、評判のいい参考書を選べば問題ないです。
試験内容はマルコフ情報源とか通信路符号化とかランレングス符号とか。
対策はしていましたが自信はなかったです。今年の試験では出なくて助かりました。
自分はこの本を使って学習しました。
内容は分かりやすかったのですが、演習問題の計算が煩雑で、解答が不親切(答えの数値だけというのが多い)という点が不満でした。
3.試験の結果
開示結果がきたので載せておきます。
TOEFL 557/677
数学 200/300
専門 165/300
数学は思ったより高かったですが、概ね予想通り。
やはり専門で差がつきやすいと思います。
4.最後に
専門の対策がおろそかでも受かる場合もありますが、どうしても運要素が強くなってしますのでおすすめしません。上記開示のような得点の取り方は悪いサンプルケースです。
あと、外部の方の参考のための記録なのに、これを言ったら元も子もない気がしますが、内部の知り合いの人がいたら定期試験の問題とか参考書の情報を教えてもらうべきです。なんだかんだこれが一番の近道かなと。
最後に、個人的な感想もかねて、2018夏入試で自分にプラスに働いた要素を2つほど考えたので書いときます。
・専門の試験問題でマニアックな問が出なかった
大問1の電気電子回路、大問3のアルゴリズム、大問5の信号処理を解いたのですが、特に、3. アルゴリズムの最小経路問題(ダイクストラ)、5. 信号処理のサンプリング信号とフーリエ変換は自分の学科の授業でやったことがあって、かつ基本的な問題なので別学科出身という不利を感じませんでした。
・数学は例年の傾向を外してきた
3の確率・統計なんかはむしろ東大工学部の院試に傾向が近かったです。結果的に情理に絞って対策した人とそうでない人の差がそれほどつかなかったのではないでしょうか。
自分は完答はなかったですが、部分点さえ取れればという気持ちでとにかく答案を埋めてました。
以上です。読んでいただきありがとうございました。